(十九年三月十八日・防大卒業式での訓辞)

 諸君は、将来、自衛隊の幹部として様々な部署で活躍されることとなるわけであります。そうした諸君に、餞に次のことを申し上げたいと思います。それは、「思索し、決断する幹部であってほしい」ということであります。チャーチルは、その回顧録でこう述べています。

 「慎重と自制を説く忠言が、いかに致命的危険の主因となり得るか、また、安全と平穏の生活を求めて採用された中道は、いかに災害の中心点へ結びつくかを、われわれは知るであろう。」

 ここには、チャーチル独特のレトリックもあるのでしょうが、チェンバレン内閣がとった宥和政策を始め第二次世界大戦に至る様々な事件を自らの体験に照らした上での含蓄ある表現だと思います。

 特に申し上げたいのは、諸君が将来直面するであろう「危機」に臨んでは、右と左とを足して二で割るような結論が、こうした状況に真に適合したものとはならないということであります。様々な情報を幅広く収集し、情報を的確に分析し、時に応じて自らの信じるところに従って的確な決断をすることが必要となるのです。